連帯経済情報@日本語

Archive for 7月 2015

全世界の社会的連帯経済関係者のネットワークとして機能している大陸間社会的連帯経済推進者ネットワーク(RIPESS)の憲章を和訳したので、その内容をこちらで公開したいと思います。なお、英語版フランス語版、そしてスペイン語版が作成されており、今回の訳文はその中でも英語版とフランス語版を参考に作成しましたが、英語版とフランス語版の内容がわずかに違っていたので、両者の内容を基本的に盛り込む形で和訳文を作成しております。

前文

われわれは社会的連帯経済が、人間的行動の基盤および政治・経済および社会の刷新源として、他人の承認を擁護する人間的価値観および連帯原則に基づいていると考える。社会的連帯経済には、雇用の必要性および人々の福祉というニーズに応える地域社会的・結社的・協同組合的および共済的性格の活動および組織や、経済の民主化および変革に向けて連動した市民運動が含まれる。

われわれは、その使命と歩調を合わす形でRIPESSの目的を実現すべく協力するというわれわれの取り組みを確認する。

われわれは、全大陸においてRIPESSのさまざまな会員をつなぐ社会的および倫理的合意の表現として、この憲章を採択する。

RIPESSの下で結集したわれわれ組織は、以下の宣言を行う。

われわれの信念

RIPESSは、経済により人々が男女を問わずそのニーズおよび大志を充足できる一方で、将来世代がそのニーズを充足できなければならないと信じる。

RIPESSは、人間の能力開発が世界の変革の根本であり、資源と知識の生産および交換、さらに共通プロジェクトの枠組みの中で協同アクションの調整に貢献するさまざまな規模の連帯ネットワークの結成を通じてこの開発が可能となると確信している。

われわれの価値観

  • ヒューマニズム

われわれは人間およびその尊厳、文化および完全な能力開発を、われわれの努力の中核とする。われわれは、個人の能力養成および人々の集団開発や福祉を目的としたプロジェクトの建設および推進に取り組む。この理由によりわれわれは、さまざまな憲章および国際的な人権機構により認定された市民的・政治的・経済的・社会的・文化的および環境的権利の無制限の尊重、完全な施行および相互関連性を推進する。

  • 民主主義

われわれは、多様な社会や労働・生活環境をそなえた世界および組織が、自らの発展について決定する個人および諸民族の権利に対する尊重に基づいて、市民参加型の形で建設されるべきだと信じている。われわれは、共通のニーズの充足を追求している個人および社会団体の間での水平的な関係のための枠組みとして、政治を理解している。われわれはあらゆる段階の公共空間において、政治的意思決定における市民の参加に基づいた参加型民主主義を推進する。またわれわれは、労働者、消費者、生産者および次世代養育者としての関わる問題に関して人々が意思決定する能力に加え、生産物の内容、生産方法、生産理由および利潤の配分や投資に関した意思決定という公的性格に基づいた経済的民主主義も擁護する。

  • 連帯

われわれは、他人との関係を認識し、その福祉を懸念できるようになる要素として、連帯を強調する。これは、より公正で民主的、かつ平等な世界の構築のために推進する人々や組織の幅広いネットワークを形成する目的においての資源の活用や、他の社会団体や運動との関係構築を意味する。

  • 包摂性

われわれは、異なった現実および部門から出現する、経済における連帯の実践に対してオープンなネットワークである。この視点からわれわれは、イデオロギー面での差異の尊重および合意の追求に基づいた対話の確立を目指す。

  • 補完性原理

われわれは、自らの問題を解決し自身のプロジェクトに関して決定を行うという、個人およびグループの能力および知識を認識し、評価している。われわれの表明では、共通の問題を克服する組織を推進しながら、草の根の開発や常にさらなる努力を行う準備について、肯定的にとらえたいと思っている。

  • 多様性

われわれは民族的・文化的および性的アイデンティティの多様性に対する尊重を推進する。われわれはまた、既存の現実に最善の形で対応する、多様な形態の企業も尊重する。社会の全部門が代表され、特に女性や、現在のシステムで疎外されている社会グループについて、それぞれの利益を擁護できるよう、われわれは社会的連帯経済の担い手の多様性を推進する。

  • 創造性

社会変革にできるだけ貢献するクリエイティブで批判的な実践経験の構築を推進すべく、われわれはイノベーション、概念の独創性および議論を推進する。われわれは同様に、異なる文化および状況において利用可能な資源を用いることで、問題の特異性に対処する適切な技術の採用も推進する。

  • 持続可能な開発

われわれは、生態系の均衡を尊重した形で人間の需要を満たす合理的な形で、自然がわれわれに提供する資源が利用されるような、人間と自然および精神と肉体との調和した関係を推進したり、環境および生物多様性を保護したりしながら、持続可能な開発を推進するわれわれの意思を表明する。このためわれわれは、地球上の生命を脅かす現在の新自由主義型経済成長モデルに疑問を呈する。

  • 平等性、公平性そして万人向けの正義

われわれは、あらゆる形態の差別および支配に対する戦いの中でわれわれの行動を記録する。とりわけ、女性、子ども、若者、高齢者、先住民、貧困層および障碍者に対する差別および弾圧は撲滅されなければならない。

  • 各国および諸国民・民族の尊重および統合

われわれは、南の諸国に対して北の諸国が行っている、あらゆる種類の経済的・政治的および文化的支配に反対する。われわれは連帯のグローバリゼーションを渇望しつつ、南北諸国の間で協力および補完性に基づいた統合という代替案を推進する。

  • 多様で連帯に根差した経済

個人や諸国民を疎外し、経済活動の動機を利潤と自己利益の追求へと矮小化し、これにより無制御状態の市場経済を富と雇用の唯一の創造者と規定する新自由主義経済モデルに対してわれわれは、多様な連帯経済の有効性およびそのための行動を支持する。社会および連帯の文化という枠組みの中で、民主的に規制された市場、政府の参加による資源の平等な再分配および互恵的な実践の確認という形で表現された、社会や富の集積、再配分および互恵性の論理を組み合わせ均衡させる経済をわれわれは提唱し、その推進のために活動を行う。

われわれの使命

RIPESSの使命は、あらゆる経済活動に社会的・倫理的側面を組み込んだ社会的連帯経済の建設および推進である。これは、地域社会および国際社会の経済的および社会的ニーズに対応した商品およびサービスの生産、交換および消費、そして経済分野における競合各社間での協調的な関係の構築から構成される。

この社会的連帯経済は、資本に対する労働の優先を評価する。これは、利益追求あるいは金融所得ではなく、個人および地域社会のニーズの充足を目的とする。連帯経済の団体は民主的な意思決定モデルおよび参加型で透明な経営システムに基づき、これにより経済活動の成果の共同所有や責任負担、さらには成功への継続した動機付けおよび貢献の確保を目的とする。

この経済の貢献は、主に安定した雇用の創出、新たなサービスの開発、生活の質の改善、男女平等への貢献、環境保護そして倫理的な条件下における富の創造を通じた、地域、国そして国際的な開発の出現により評価される。

われわれのビジョン

RIPESSは、人間および環境面での限度の観点から、何が生産的であるかを決定する経済組織の方法を追求する。これは、自らの尊厳を保証する物的・知的および精神的資源に対して誰もがアクセス権を持ち、個人・社会および経済的な権利に対する尊重を推進し、経済的な意思決定における民主的な参加や市場運営に対する市民管理および政府の介入を促進し、生産・流通および消費において環境や社会的責任の採択を推進し、そして富の配分において社会的および性的平等に邁進できるようになる経済を意味する。

われわれのアプローチ

  • われわれは地元、国内、地域そして全世界的な枠組みで社会的連帯経済の原則、価値観、実践例、そしてその担い手のネットワークを推進する。
  • われわれは、社会的連帯経済のさまざまな思想や実践例の間での交流や対話の強化に努める。
  • われわれは、新自由主義的なモデルおよびそれにより植民地支配システムを批判する一方で、各社会の自立した発展のための画期的な経済的イニシアチブを推進する。
  • われわれは地域社会の総合的な発展において、多文化主義、民主主義および草の根の参加を擁護する。
  • われわれは、社会的目的を持った企業の形成および発展を促進する。
  • われわれは、各国内で、および資源や機会のより平等な配分のための多国間組織や国際機関とともに、草の根および社会的セクターを促進すべく公共政策の変更に努める。

これら権利は、市場と暴力という新自由主義的なグローバリゼーションや、生活の完全な商品化に反対するという他者との協力において、RIPESSの行動および全大陸上のその他の社会的エージェントとの関係を方向づける。われわれは資本による世界支配に反対し、われわれの基準や取り組みに加えて、もう一つの世界が可能だという願望を共有する他の社会運動家や社会運動と提携して、連帯および生存権、自由や民主主義のグローバリゼーションを提唱する。

われわれRIPESSの会員は、個人および諸国民の権利、環境および民主主義の尊重が世界の経済団体を支配すべきだという、拡大しつつある良心の一部である。

2008年10月20日、モンテビデオで開催されたRIPESS理事会にて承認。

広告

さて、カナダ・ケベック州が最近編纂した「社会的経済参照ガイド」をご紹介したいと思います。ご存じの通り、通常ケベック州ではフランス語のみが使われており、社会的経済に関する資料も大半がフランス語のみであることを考えると、英語でも刊行されているこのガイドは、ケベック州の実情を知るうえで貴重な資料となるかと思います。

このガイドでは、社会的経済の定義、形態、ケベックにおける歴史や現状などが、簡潔に紹介されています。来年はケベック州で協同組合の会議と社会的経済フォーラムが開催されるということで、例年に増して社会的経済部門でケベック州の存在感が国際的に増すものと思われますが、これら会議に参加される場合、あるいは別件で北米(カナダあるいは米国)の別の街を訪問するついでにケベックに立ち寄る際の、下調べの資料としてお役に立てば幸いです。

ポルトガル憲法は、協同組合についての記述が豊富です。以下、関連部分を訳出してみました。

  • 第43条第4項
    私立学校および協同組合の創設権は、これを保証する。
  • 第60条第3項
    消費者団体および消費者生協は法律の規定に従い、政府の支援を受けたり消費者保護に関して意見を表明したりする権利を持ち、その会員あるいは一般的な利益保護において手続き面での正当性が認定される。
  • 第61条第2項
    協同組合原則が遵守される限り、万人に対する協同組合の自由結成の権利は、これを認定する。
  • 第61条第3項
    協同組合は法的枠組みの中で活動を自由に展開し、連合、連合会および総連合会あるいはその他法的に規定された組織として団結できる。
  • 第61条第4項
    行政の参加を伴う協同組合に特有の要件は、法律により定める。
  • 第65条第2項
    住宅の権利を保証するため政府には、以下の権限が与えられる。
    d) 住宅の問題解決や、住居および自主建設協同組合の創設に取り組む地域コミュニティおよび住民の取り組みの推進・支援
  • 第75条第2項
    政府は法律の規定に従って、私立および協同組合教育を認定し監督する。
  • 第80条
    経済社会組織は、以下の原則に基づく。
    b) 生産手段の保有における、公共部門、民間部門および協同組合・社会的部門の共存
    f) 生産手段の保有における協同組合・社会的部門の保護
  • 第82条第4項
    協同組合・社会的部門はとりわけ、以下のものを含む:
    a) 協同組合原則を遵守した協同組合により保有・運営される生産手段。しかしながら、その特別な性格により正当化される行政参加型協同組合については、法律で定められる特性の範囲が考慮される
    b) 地域社会が保有および運営する、地域の生産手段
    c) 労働者による集団での使用対象となる生産手段
    d) 非営利で、社会連帯とりわけ共済団体を主要目的とする集団により保有・運営される生産手段
  • 第85条第1項
    政府は協同組合の創設および活動を推進・支援する。
  • 第85条第2項
    協同組合の税務面・財務面での特典、融資取得のための最恵条件および技術支援については、法律により定める。
  • 第94条第2項
    (第94条1項の規定に従って大地主から)収用された土地は法律の規定に従って小農家に、そして優先的に家族農業、農村労働者協同組合あるいは小規模農家 などの労働者による土地活用形態による所有あるいは留保向けに引き渡される。しかしながらこれは、所有権の完全移譲前に各土地の利用における有効な試用期 間および合理性を損ねるものではない。
  • 第95条
    所有権に関わらず政府は法律の規定に従って、とりわけ協同組合といった形態における構造的あるいは純粋に経済的な統合向けの特に法的・税務的および信用供 与面でのインセンティブを通じて、あるいは土地区画の統合を通じて、農業政策の目的の観点から適切な規模未満である農業単位の再構成を推進する。
  • 第97条第1項
    農業政策の目的の追求において政府は、特に家族農業単位で個別に、あるいは協同組合の組合員として統合された中小農家や、農業労働者協同組合、およびその他の形態の労働者による経済活動を、優先的に支援する
  • 第97条第2項
    政府の支援には特に以下のものが含まれる:
    d) とりわけ彼らによる生産・消費・販売・加工およびサービス協同組合、またその他労働者によるその他の形態の経済活動のための協同組合の結成において、農村労働者および農民の結社の推進
  • 第165条第1項
    政府に別途権限が与えられていない限り、以下の案件に関しては国民議会が法律制定の独占権限を持つ。
    x) 所有物についての協同組合・社会的部門に統合された生産手段に関する制度
  • 第288条
    憲法改正の際には、以下の点を尊重しなければならない:
    f) 生産手段の保有における公共部門、民間部門および協同組合・社会的部門の共存

個人的には、ここまで詳細を憲法に書く必要があるかどうかはわかりませんが、少なくても世界的に見て、ここまで協同組合に関する記述が多い憲法は珍しいものと思います。なお、ポルトガルにおける社会的連帯経済の状況については、こちらで日本語でまとめています。また、同国で2013年に可決した社会的経済基本法についても、こちらで日本語でまとめています(スペインなどの類似の法律を比較)。

ラテン系の国は一般的に英語が通じにくい傾向にありますが、例外的にポルトガルは英語に堪能な人が多く、特に視察レベルであれば英語だけで問題なく訪問をこなすことができるかと思います。ポルトガルと日本との間では16世紀に交流が盛んに行われたものの、現在は下火になっていますが、ご参考になれば幸いです。



  • 鶴岡達也: 初めましてこんにちは。 たまたまこちらの記事にたどり着いたのですが、地域通貨の国際大会が行われたと知
  • トラネコ (@Toraneko280): 政治が無策でも世界は手を差し伸べてくれる。大航海時代を開いたポルトガルは不思議に日本的な部分が有る。
  • ほんだ さちよ: すごくおもしろい企画ですね。わたしはベルギー在住ですが、ベルギーでも農業という形で受け入れてくれると