連帯経済情報@日本語

Archive for 4月 2013

さて、マイクロクレジット業務や地域通貨の発行に加えて各種研修活動などを行っているブラジルのコミュニティバンクの運営者へのインタビュー(英語)をご紹介したいと思います。

http://www.reconomy.org/community-currencies-in-brazil-interview/

ブラジルは貧しい人が多い国ですが、そういう貧しい人が住む地区で住民組織の手によりコミュニティバンクが立ち上がり、地域住民の生活向上のためにさまざまな活動を行っています。ただ、ブラジルの連帯経済関係の情報は基本的にポルトガル語でしか得られないため、この英語資料はかなり 貴重なものだと言えます。多少長いですが、英語の文章自体は読みやすいものですので、英語がある程度分かる方はご覧いただけると幸いです。

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さて、香港の社会的企業の概況が入ってきましたので、お知らせしたいと思います。

http://www.socialenterprise.org.hk/sites/default/files//general/powerofgood_72(dpi)_0.pdf (英語・繁体中国語)

これによると、香港でも社会的企業は、222団体(2007~2008)から406団体(2012~2013)と、この5年間で倍近くに増えています。このうち60%はNPOとして、39%は会社として法人登録されており、協同組合はわずか1%に過ぎません。

また、社会的企業の目的としては(複数回答)、

  • 71%: 社会的弱者への雇用創出
  • 69%: 社会的弱者への職業訓練
  • 29%: 社会的包摂の推進
  • 26%: 満たされていない社会的ニーズの充足
  • 20%: 環境保護の推進
  • 7%: フェアトレードの推進

となっており、1人あたり平均で37時間が職業訓練に充てられ、平均時給は37香港ドル(約476円)となっています。

業務分野としては多い順に(これも複数回答)

  • 28%: 生活雑貨
  • 27%: 飲食業
  • 24%: 医療介護
  • 15%: 業務サポート
  • 13%: 環境にやさしい製品あるいはリサイクル
  • 10%: 教育および研修
  • 8%: 住宅の清掃やリフォーム

などとなっており、資金源としては(複数回答)

  • 50%: 香港政府の支援
  • 24%: 関連非営利団体からの支援
  • 22%: 自己資金
  • 13%: その他支援
  • 2%: ファンドレイジング

となっています。香港では香港上海銀行(HSBC)が社会的企業の推進にかなり積極的に取り組んでいるので、もうちょっと大企業からの資金援助が多いかと思ったのですが、そうでもないようですね(関連非営利団体経由もあると思いますが)。

主な問題点としては(複数回答)

  • 製造コストの高さ: 52%(特に中国大陸と比べると香港は人件費が高い)
  • 事務所などの賃料の高さ: 49%
  • 管理職の不足: 42%
  • 公的認知不足: 41%
  • 融資源不足: 25%
  • 社会的弱者の人事管理の困難さ: 24%
  • 市場の小ささ: 21%

となっています。

さて、ブラジル最大のコミュニティバンクで、地域通貨も発行しているパルマス銀行(北東部セアラ州の州都フォルタレザ市)は、地域住民が主体 となって運営するマイクロクレジットおよび地域通貨の事例として世界的に注目されていますが、その2012年報告書がオンラインで刊行されましたので、ご紹介した いと思います。

http://www.inovacaoparainclusao.com/uploads/4/2/2/8/4228830/relatrio_do_instituto_palmas_12.2.pdf (ポルトガル語)

同銀行は、フォルタレザ市内でも元スラム街で今でも比較的低所得者層が多 く住むパルメイラス地区で1998年に設立され(今年で15周年)、 2002年からは 地域通貨も発行していますが、この事例はブラジル国内外で注目されています。 来年はブラジルはFIFAワールドカップ(サッ カー)の開催国となりますが、この際に世界中から訪れるサポーターや新聞記者などに対してパルマス銀行を紹介し、サッカー以外のブラジルという側 面を紹介する予定です。実際、1月には元ブラジル代表のロナルドが、FIFAの事務局長とともにパルマス銀行を訪れており、同銀行への観光客の誘致を推進することで合意しています。また、現在では同様の銀行がブラジル各地に103箇所存在しています。

以下、この報告書の内容の要約です。

  • 昨年の受賞: 米国ニューヨークのコロンビア大学が開催した社会的イノベー ションおよび開発会議において、パルマス銀行の創設者ジョアキン・メロが基調講演(3月)、ドイツ・オーバーハウゼンでパルマス銀行の実践を創設すべくパルマス銀行関係者が訪独講演(4月)、サンドラ・マガリャインス(ジョアキン・メロの妻 で彼女自身もパルマス銀行の発展に多大な貢献)が地元セアラ州議会より表彰(8月)。
  • 主要業務: 地域通貨パルマの発行と管理、マイクロクレジット(50レアル (約2480円)~1万5000レアル(約74万5000円))、パルマ保険(死亡・事故保険)、銀行支店業務(大手銀行が地域内にないため、ボルサ・ファミリア(貧困家庭向けにブラジル政府が提供している子育て支援基金)や年金の受給などの 銀行サービスを提供)、携帯電話による支払い、連帯市場(地区内で生産された商品を販売するイベント、月2回開催)、各種研修など。
  • その他取り組み: コミュニティカウンセラー養成講座、バチ・パルマス(地元のバンド)キャンペーン、ファッションアカデミー(同地区には服飾関係の零細業者が多い)、地域社会経済フォーラム(地域の経済や社会の問題を住民レベルで検討する集まり)、パルマトゥル(パルマス銀行の取り組みを国内外の視察者に紹介、簡素な宿もある)
  • ELASプロジェクト(elasとはポルトガル語で彼女たちという意味): 女性の起業支援プログラム。各種研修、マイクロクレジット、共同購入による仕入れ価格の削減など。
  • パルマスラボ: 2012年に創設された研究所。ITを活用して地域内、あるいは同様のコミュニティバンク間での連絡を緊密化。
  • 指標マトリックス: サンパウロ大学および米国コロンビア大学と共同で、コ ミュニティバンクの戦略評価のための指標を作成。
  • セアラグルメフェスティバル: 高級ホテルやレストランで料理している人たちは、大部分が郊外の庶民地区に在住しているため、グルメフェスティバルで観 光客を郊外に呼び込み。

また、以下は2012年の統計データです。

  • 融資総額: 366万0991.97レアル(約1億8200万円)
  • 生産ローン融資案件数: 4479件
  • 保険対象となっている家族数: 2213家族
  • 連帯市開催回数: 18
  • 消費ローン: 230件、4万パルマ(約199万円)が流通
  • 各種研修プログラム参加者総数: 2291名

なお、23ページには2008年以降の融資総額の変遷が掲載されています。2011 年度と比べると融資案件数は減っていますが、その一方で融 資総額は増えていることから、比較的大型の融資案件が増えていることがわかります。

以上、ご参考になれば幸いです。

ソウル市役所のサイト内で社会的経済関係のサイトを2つ見つけましたので、ご紹介します。韓国語オンリーですが、翻訳サイトを活用すれば日本語でも閲覧可能な部分も少なくないので、ご参考までにどうぞ。

さて、ソウル市で去る3月8日に協同組合活性化支援条例が可決したという情報が入りましたので、その日本語訳文をお届けしたいと思います。なお、韓国語から日本語への訳者であり、かつこの文章の転載を快諾いただいた丸山茂樹氏(参加システム研究所、協同組合総合研究所(略称JC総研)客員研究員、日本協同組合学会会員)には、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。また、フォントの関係上、丸数字については「第X項」という表現に置き換えております。

ソウル特別市協同組合活性化支援条例

第1条(目的)

この条例は協同組合の設立と運営を支援して、協同組合の生態系の造成と活性化のために必要な事項を規定することによって、安定的な働く場の創出、経済民主化の実現、地域共同体の回復及び社会統合へ貢献することを目的とする。

第2条(定義)

この条例で使用する用語の定義は次の通りである。

  1. “協同組合”というのは、「協同組合基本法」(以下“法”という)第2条で定義する協同組合及び協同組合連合会と、個別法律を根拠にして設立された協同組合及び連合会をいう。
  2. “社会的協同組合”というのは、第1号の協同組合協同組合の中で地域住民の権益・福利増進に関連した事業を行うとか脆弱階層に社会サービスまたは働く場を提供するなど、営利を目的にしない協同組合及び協同組合連合会をいう。
  3. “協同組合協議会”(以下“協議会”という)というのは、協同組合が他の協同組合、外国の協同組合及び関連国際機関などとの相互協力、理解増進及び共同事業の開発などのために構成、運営する協議体をいう。
  4. “協同組合生態系”というのは協同組合の設立、発展、市場の造成、利害関係者の多様な参加、再生産及び再投資などが好循環的に成り立つシステムをいう。
  5. “社会的経済”というのは社会経済的な両極化の解消、社会安全網の回復及び社会構成員の共同の人生の質と福利水準の向上など公共の利益と社会的価値の実現のために、協力と互恵を土台にして生産、交換、分配及び消費が成り立つ経済システムをいう。

第3条(基本原則)

第1項: 協同組合は自主・自立・自治の基本理念と国際協同組合同盟の協同組合の価値と原則に立脚して運営されなければならない。

第2項: 協同組合は協同組合の自発的、民主的な参加と協同組合相互の間の信頼を基盤にして運営されなければならない。

第4条(市長の責務)

第1項: ソウル特別市長(以下“市長”という)は協同組合の設立(転換を含む。以下同じ)と運営を支援して生態系造成と活性化に必要な基盤を造成するために努力しなければならない。

第2項: 市長は協同組合の生態系造成と活性化のための総合的な施策をつくり施行しなければならない。この場合、協同組合連合会及び協議会の意見が反映されるように努力しなければならない。

第3項: 市長は協同の重要性と価値を広げる教育と広報のために努力しなければならない。

第4項: 市長は協同組合が業種別の他の中小企業との競争において、差別を受けないように資金支援と制度改善などをしなければならない。

第5条(協同組合基本計画)

第1項: 市長は協同組合の生態系造成と活性化のために3年ごとに協同組合基本計画(以下“基本計画”という)をつくり施行しなければならない。

第2項: 基本計画には次の各号の事項が含まれなければならない。

  1. 協同組合支援政策のビジョン及び発展戦略
  2. 次の各項目の協同組合活性化支援施策についての事項
    ア. 協同組合の設立及び運営の支援
    イ. 協同組合に対する認知度を高め、底辺拡大のための広報、教育、コンサルティング
    ウ. 専門的人材の養成及び組合員及び創業予定者に対する教育と情報提供
    エ. 協同組合の基盤構築及び与件の造成
    オ. 公共購買及び公共サービスの委託の活性化
  3. 協同組合関係機関の間の相互協力及びネットワーク構築
  4. 協同組合ついての実態調査及び政策改善に関する事項
  5. 協同組合に対する行政の財政支援に関する事項
  6. その他、協同組合の活性化のために必要な事項

第3項: 市長は基本計画による年度別施行計画をつくり、施行しなければならない。

第4項: 市長は第1項による基本計画と第3項による年度別施行計画が終了した後には該当計画の成果などについて評価し、改善事項を次年度計画に反映しなければならない。

第5項: 市長は基本計画の作成・施行する時にソウル特別市(以下“市”という)の主要政策と連携するようにしなければならない。

第6条(実態調査)

第1項: 市長は基本計画の作成・施行のために協同組合についての実態調査を実施することが出来る。

第2項: 市長は第1項による実態調査のために専門機関や団体に委託することが出来る。またその場合、予算の範囲で必要な経費を支援することが出来る。

第3項: 市長は実態調査の結果を土台にして協同組合政策の改善の方策を模索しなければならない。

第7条(委員会の設置)

第1項: 協同組合の生態系造成と活性化などに関する事項を審議するために市協同組合委員会(以下“委員会”という)を置く。この場合、委員会の機能は「ソウル特別市希望経済委員会設置及び運営に関する条例」第11条第1項第1号の社会的経済分科委員会に代わるものとする。

第2項: 委員会は協同組合に関する次の各号の事項を審議する。

  • 協同組合の活性化のための重要な政策事項
  • 基本計画及び年度別施行計画の作成と評価に関する事項
  • 協同組合の活性化支援施策の点検及びモニタリング
  • その他、協同組合活性化のために必要と認められる事項

第3項: 委員会に上程される案件に対する事前の審議調整と委員会から委任を受けた事項などを処理するために、委員会に協同組合活性化実務委員会を置くことができる。

第8条(相談支援センターの設置と運営)

第1項: 市長は協同組合の設立及び運営などを支援するために協同組合相談支援センター(以下、“センター”という)を設置・運営することができる。

第2項: センターは次の各号の機能を遂行する。

  1. 協同組合の設立の相談及び情報提供
  2. 協同組合の設立申告の支援
  3. 協同組合の設立予定者、組合員及び役職員の教育
  4. 協同組合の創業の支援及び経営コンサルティング
  5. 協同組合についての教育と広報
  6. その他、協同組合の支援のために必要であると認められる事項

第3項: 市長は「ソウル特別市の行政事務の民間委託に関する条例」によってセンターを、関連団体や法人に委託して運営することが出来る。この場合、センターの運営経費の全部または一部を予算の範囲で支援することができる。

第9条(教育及び広報)

  1. 市民及び協同組合設立希望者の協同組合理解の増進
  2. 協同組合組合員の能力向上のための教育
  3. ソウル地域の協同組合の製品及びサービスの販売促進
  4. その他、協同の価値と文化を広げるための市民の認識の改善など

第10条(協同組合の日)

市長は法第12条によって協同組合の日に指定された7月第1土曜日とそれ以前の1週間、協同組合週間の趣旨に相応しい行事を実施するように努力しなければならない。

第11条(協同組合基金の造成)

第1項: 市長は協同組合の活性化のために協同組合基金(以下、“協同基金”という)を造成して運用することが出来る。

第2項: 協同基金は次の各号に使うことが出来る。

  1. 協同組合の創業及び運営資金の融資
  2. 協同組合連合会及び協議会の協同組合活性化及び支援の事業費
  3. 協同組合の事業の技術開発及び調査・研究に関連した支援
  4. その他、市長が必要であると認定した場合

第12条(支援)

第1項: 市長は協同組合の生態系の造成と活性化のために次の各事項を支援することが出来る。

  1. 協同組合の設立と運営に必要な経営、法律、税務、会計、技術など専門分野に対する諮問及び情報提供
  2. 協同組合の専門的な人材の養成、組合員及び役職員の教育及び創業教育
  3. 地域別、業種別の協同組合連合会及び協議会の協同組合活性化事業
  4. 協同組合基金の造成
  5. 自治区単位の協同基金及び財団の活性化
  6. 自治区単位の協同組合ネットワークの構築
  7. 社会的経済組織との協力及び共同事業を促進するための“社会的経済の民間ネットワーク”の構築及び活動
  8. その他、市長が必要であると認めた事項

第2項: 市長は社会的協同組合の設立又は運営に必要な敷地の購入費・施設費を支援することが出来る。

第3項: 市長は協同組合の物品およびサービスに対して公共購買の目標制を実施して、公共サービスの民間委託、参加を奨励して、参加時加点を付与することができる。

第13条(協力体制の構築)

市長は協同組合活性化のために協同組合連合会及び協議会など民間部門との協力に努力しなければならない。

第14条(市税などの減免)

第1項: 協同組合が市の財産または物品を賃借する場合には「ソウル特別市共有財産及び物品管理条例」によって貸付料を減免することが出来る。

第2項: 会的協同組合の事業と財産に対しては「地方税特例制限法」及び「ソウル特別市税減免条例」が定めるところにより取得税など市税を減免する事ができ、個別条例により使用料、手数料、負担金などを減免する事ができる。

第15条(権限の委任と委託)

第1項: 市長は「ソウル特別市事務委任条例の定めるところにより協同組合業務の一部を区庁長へ委任することができる。

第2項: 市長は協同組合の生態系造成及び活性化のためにこの条例で定める市長の権限に属する事務の一部を法人及び団体などに委託することができる。

第16条(褒賞)

第1項: 市長は協同組合活性化のために次の各号に該当する場合にこれを褒賞することができる。

  1. 自立経営および地域社会への寄与など模範となる協同組合
  2. 協同組合の活性化に顕著な功労があると認められる個人または団体

第2項: 第1項よる具体的な手続きは「ソウル特別市表彰条例」による。

第17条(施行規則)

この条例の施行に必要な事項は規則で定める。

付則

この条例は交付した日から施行する。



    • 鶴岡達也: 初めましてこんにちは。 たまたまこちらの記事にたどり着いたのですが、地域通貨の国際大会が行われたと知
    • トラネコ (@Toraneko280): 政治が無策でも世界は手を差し伸べてくれる。大航海時代を開いたポルトガルは不思議に日本的な部分が有る。
    • ほんだ さちよ: すごくおもしろい企画ですね。わたしはベルギー在住ですが、ベルギーでも農業という形で受け入れてくれると